即興

人間と月

月は大変朗らかな性質ですので、人間よりもゆったりと歩みます。 瞬きも大変ゆっくりなので、人間の、立ち上がりから地に伏すまでを、見逃す事も少なくありません。 月が瞬きをすると、閉じる前にあった街が海になっていたりします。 けれど月はいつも一人で…

海と星子

暗い暗い海を何度泳いだ事でしょう。 クルムは波に包まれながら夜の星空を見て不思議な気持ちになりました。 夜空に浮かぶ星達は取るに足らない小さな粒のように見えましたので、ミグラントの里に居た頃は星空を砂漠のように思い、そこに上る星子達を見てよ…

命について

これはツバメが教えてくれたことだけれど、遠くの海で一人のミグラントが亡くなったらしい。 森に辿り着けず、海に迷い込んでしまったミグラント。 そんなミグラントに鳥と魚が好意を寄せた。 日に日に衰弱するミグラントを助けたくて、鳥は木苺のジュースを…