海と星子

暗い暗い海を何度泳いだ事でしょう。

クルムは波に包まれながら夜の星空を見て不思議な気持ちになりました。

夜空に浮かぶ星達は取るに足らない小さな粒のように見えましたので、ミグラントの里に居た頃は星空を砂漠のように思い、そこに上る星子達を見てよく涙を流したものです。

ですが、波に身を任せている今では、星空をまるで鏡のように見つめています。

この広く暗く、暖かい海でクルムは以前よりも自分がほのかに輝けているような気がしました。

それと似ている星空はきっと今のように暖かいのだと思うと、空に上る不安が少しだけ海に溶けていきました。

 

 

何分広い海での出来事ですので、二人が今どこに行ったのかは、私達が知り得る話ではありません。

ただ、月影に一羽のカモメが照らされて、今日も夜が更けていく事だけは確かなのです。